鍵穴の形は、地上を歩く人の目には、最後まで結ばれません。墳丘の全体像を一度でとらえるには、高さが要ります。
堺市役所の21階展望ロビーは、無料で開かれていて、{百舌鳥|もず}の墳丘群を一望できる数少ない場所です。眼下に、緑の島のような
仁徳天皇陵古墳が広がります。歩く前にこの全景を頭に入れておくと、一周の道のりが、ぐっと意味を持ちはじめます。{百舌鳥古墳群|もずこふんぐん}ビジターセンターの空撮映像でも、空からの視点を体験できます。展望ロビーは朝九時から夜九時まで開いているので、日が傾く時間帯には、森の影が長くのびていきます。
そして、守るべきことがひとつ。仁徳陵や{応神陵|おうじんりょう}をはじめ、多くの古墳は宮内庁が管理する{陵墓|りょうぼ}で、墳丘に入ることはできません。
津堂城山古墳のように、後円部の頂上が{陵墓|りょうぼ}参考地として管理されているところも同じです。{拝所|はいしょ}は濠の外から拝むための場所で、柵の向こうの森は、見物の対象であると同時に、長い年月のあいだ手を触れられずに眠ってきた祈りの空間でもあります。
一方で、
古室山古墳のように、墳丘に上がれる史跡もあります。どこが入れて、どこが入れないのか。その違いを知っておくだけで、古墳歩きの印象はずいぶん変わります。場所によっては、濠の外からは墳丘の一部しか見えません。全景は高い場所や空撮映像で補う、というのがちょうどよい付き合い方です。
作法は単純です。声を落とし、ごみを持ち帰り、住宅地の細い道では暮らしの邪魔をしない。この三つで、ここを守ってきた静けさの、ささやかな担い手になれます。
空からは鍵穴、地上では森と濠、そして人の暮らしのすぐ隣。三つの姿がそろったとき、古墳群は遺跡というより、いまも息をする風景になります。さあ、水筒とスニーカーを用意して、最初の一基へ。千五百年の眠りが、街のなかで待っています。
対象/Subject: 百舌鳥・古市古墳群のビュースポットと見学マナー
主なビュースポット/Viewpoints: 堺市役所 21階展望ロビー(無料・9:00〜21:00・百舌鳥エリアを一望)、百舌鳥古墳群ビジターセンターの空撮映像
墳丘に上がれる古墳:
古室山古墳
管理区分/Management: 多くの天皇陵古墳は宮内庁管理の陵墓(墳丘内立入不可・拝所あり)
見学マナー/Etiquette: 静粛・ごみの持ち帰り・住宅地の生活への配慮
所在地/Location:
大阪府堺市・羽曳野市・藤井寺市
世界遺産登録/Inscription: 2019年7月(ユネスコ世界文化遺産)
公式サイト/Official Site:
百舌鳥・古市古墳群 地図
Photo: 国土地理院 /
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