乗鞍岳は、活火山である。過去一万年のあいだに噴火した火山を、そう呼ぶ。
地層には、その噴火が刻まれている。{気象庁|きしょうちょう}の整理によれば、過去一万年に少なくとも十四回。平均すれば、七百年から八百年に一度ほどの間隔になる。内訳は、マグマ噴火が二回、水蒸気噴火が十二回と調べられている。
約九千六百年前と、約九千二百年前。{剣ヶ峰|けんがみね}の火口で、マグマ噴火が起きた。九千二百年前の噴火では、火山灰やスコリアが噴き出し、{火砕流|かさいりゅう}が発生したと考えられている。
最後の噴火と考えられているのは、約五百年前。{剣ヶ峰|けんがみね}の付近で起きた水蒸気噴火だ。ただ、それを書き残した文書は見つかっていない。有史以降、乗鞍岳の噴火の記録はなく、地質調査が、記録のない噴火を、地層の中から読みとった。
文字が残らなかった噴火が、岩の層には、年代つきで残っている。
水蒸気噴火で大きな{噴石|ふんせき}が届く範囲は、火口からおよそ一キロメートルと想定されている。{気象庁|きしょうちょう}は、この山を常時観測の対象にしている。
静かに見える稜線は、噴火を数えられる山の稜線でもある。数えられる時間の先に、山はまだ続いている。