乗鞍岳は、一つの山ではない。二つの火山が、時を隔てて重なっている。
先に生まれたのは、古期乗鞍。千町火山体と呼ばれるこの山は、約百二十八万年前から八十六万年前まで、四十万年あまり活動を続けた。溶岩ドームと溶岩流を重ねた、安山岩とデイサイトの成層火山で、復元された体積は約十六立方キロメートルと見積もられている。
その山が、崩れた。活動が終わったあと、北側と南東側で大規模な山くずれが起こり、巨大な円錐は、半分ほどの形しか残らなかった。
崩れ残った山の上で、約三十二万年前、新しい火山が育ちはじめる。新期乗鞍。高天ヶ原、{四ッ岳|よつだけ}、{恵比須|えびす}、権現池。いくつもの火山体が、それぞれの噴出口から溶岩を積み重ねて、古い山の上に、別の山の姿をつくっていった。乗鞍火山が吐き出した岩石は、全体でおよそ二十六立方キロメートルという。
最高点の{剣ヶ峰|けんがみね}は、標高三千二十六メートル。崩れて欠けた時間と、積み直した時間が、稜線の高さを支えている。
半分を失った山の上に、高さを積みなおした岩の道を、人は今も{頂|いただき}へ歩いている。
この章の数字
- 古期乗鞍は約128万〜86万年前、新期乗鞍は約32万年前から育ちはじめた。
- 最後に溶岩が流れたのは約9千年前。気象庁は、過去1万年に少なくとも14回、平均すると約700〜800年に一度の噴火があったとしている。
- 最高点の剣ヶ峰(けんがみね)は標高3026m。
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- 峰の名前のいわれは
二十三の峰に残る名前
- 山頂の社は
社のある頂へ
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