乗鞍岳は、岐阜と長野の県境に連なる、二十三の峰の総称だ。最高点は{剣ヶ峰|けんがみね}、標高三千二十六メートル。
{硫黄岳|いおうだけ}は、硫黄が匂うから{硫黄岳|いおうだけ}。{猫岳|ねこだけ}は、斜面にうずくまる猫に似た岩から。{烏帽子岳|えぼしだけ}は、平安の貴族がかぶった烏帽子の形から。{屏風岳|びょうぶだけ}は、{頂|いただき}に近い垂直の崖が、屏風に見えたから。名の多くは、通った人が目と鼻で受けとめたものを、そのまま残している。
人の足跡から生まれた名もある。円空は、{大丹生岳|おおにゅうだけ}に現れた妖怪を{魔王岳|まおうだけ}へ追放して鎮め、{摩利支天岳|まりしてんだけ}には寺を建てたと語り継がれる。{木喰|もくじき}は{朝日岳|あさひだけ}で修行し、{大日岳|だいにちだけ}の{頂|いただき}の少し下には、修行の場とされる{天岩屋|あまのいわや}がある。雪山岳には、お釈迦様が訪れたという伝説が残る。
暮らしの単位が、名になった峰もある。十石山は、米の消費量を表す昔の単位から。乗鞍火山群でいちばん古い山に、人の暮らしの物差しが名として与えられた。{恵比寿岳|えびすだけ}と{大黒岳|だいこくだけ}は、七福神の名を借りている。
{魔王岳|まおうだけ}には、もう一つの由来も伝わる。戦時中、人を遠ざけたい旧陸軍が名づけたというものだ。妖怪を追い払った僧の話と、人を遠ざけるための名。二つの時代の願いが、同じ一つの峰に重なっている。
晴れた日には、{富士見岳|ふじみだけ}の{頂|いただき}から、南東に富士山が見える。
名をつけた人たちが歩いた稜線は、今も峰から峰へ続いている。
峰の名前のいわれ
- 硫黄岳:硫黄が匂うことから。
- 猫岳:斜面にうずくまる猫に似た岩から。
- 烏帽子岳:平安の貴族がかぶった烏帽子の形から。
- 屏風岳:山頂近くの垂直な崖が屏風に見えたことから。
- 十石山:米の消費量を表す昔の単位から。乗鞍火山群でいちばん古い山とされる。
- 恵比寿岳・大黒岳:七福神の名を借りたもの。
伝承
- 円空は、大丹生岳(おおにゅうだけ)に現れた妖怪を魔王岳へ追放して鎮め、摩利支天岳には寺を建てたと語り継がれる。
- 木喰(もくじき)は朝日岳で修行した。大日岳の頂の少し下に、修行の場とされる天岩屋(あまのいわや)がある。
- 魔王岳には、戦時中に旧陸軍が名づけたとされる由来も伝わる。
つづきを読む
- 池と水の流れは
七つの池と水の行方
- 火山としての成り立ちは
二つの火山が重なった山