標高二千五百メートル前後で、木が姿を消す。{森林限界|しんりんげんかい}だ。その下には、ダケカンバの林。その上には、ハイマツが地面を這う世界。二つの境目は、見て分かるほどはっきりしている。
{畳平|たたみだいら}の周辺で育つ木は、ほとんどハイマツ一種。風が強く、背が低く伸びる。一年に数センチしか伸びない松が、地面を覆うように広がり、その陰で、キバナシャクナゲやコケモモが根を張る。
{畳平|たたみだいら}の標高は、二千七百二メートル。道が開く五月中旬には、高さ約十メートルの雪の壁ができ、六月中旬ごろまで残る。
雪が解けると、ハクサンイチゲとミヤマキンポウゲが群れて咲きはじめる。乾いた砂礫の地面には、コマクサ。真夏でも気温が十度前後まで下がる日があり、雲は早く動いて、視界はたちまち白くなる。
風と雪と短い夏が、背の低い花と松だけを、この高さに残した。
年に数センチずつ伸びる松の向こうへ、細い道はまだ続いている。
この章の数字
- 森林限界は標高2500m前後。その先で生き残るのはハイマツで、1年に数cmしか伸びない。
- 畳平(たたみだいら)の標高は2702m。
- 道が開く5月中旬には高さ約10mの雪の壁ができ、6月中旬ごろまで残る。
- 真夏でも気温が10度前後まで下がる日がある。
咲く花
- ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、コマクサ。
ライチョウ
- 国の特別天然記念物。本州中部の高山帯にしかいない鳥。
- ごみに引き寄せられるキツネやカラス、高山植物を食べるニホンジカが脅威とされる。
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- 畳平へ上る道の歴史は
軍が引いた道、石をどけたバス
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