ライチョウの{雛|ひな}が生きのびる確率は、低い。乗鞍岳では、二〇〇一年から続く調査で、{孵化|ふか}から独立までの{雛|ひな}の生存率が、平均で約三割と報告されている。
{孵化|ふか}して約一か月のあいだ、{雛|ひな}の死亡率はとくに高い。原因は、{梅雨|つゆ}の悪天候と、キツネ、テン、オコジョといった{捕食者|ほしょくしゃ}だと考えられている。
そこで考え出されたのが、ケージ保護だ。{雛|ひな}と親鳥を一緒にケージに入れ、日中は外で過ごさせ、夜は{捕食者|ほしょくしゃ}から守る。
ライチョウは、環境省のレッドリストで、二〇一二年に絶滅危惧IB類へ引き上げられた。国の特別天然記念物で、本州中部の{高山帯|こうざんたい}にしかいない鳥だ。乗鞍岳は、北アルプスの南端に独立して立つ山で、乗鞍のライチョウは、ほかの山の個体群と、ほぼ切り離された群れをなしている。
脅威は、{捕食者|ほしょくしゃ}だけではない。ニホンジカが{高山帯|こうざんたい}に入りこみ、ライチョウの餌になる高山植物を食べて、暮らす環境を荒らす。環境省の計画は、これを減少の要因の一つに挙げている。
乗鞍のライチョウは、中央アルプスへも運ばれた。二〇二〇年以降、三家族と雌一羽の、計二十羽。山を渡った鳥たちが、別の山で暮らしはじめている。
標高二千五百メートルを超える草と岩の世界で、小さな命を守る仕事は、今も続いている。