この路地では、上を見て歩いてください。 門の上、あるいは壁の高いところに、獅子の顔がついた円い板があります。剣を一本、口にくわえている。劍獅、けんしと読みます。安平の魔除けです。 見つけたら、剣の向きを確かめてください。…
この路地では、上を見て歩いてください。
門の上、あるいは壁の高いところに、獅子の顔がついた円い板があります。剣を一本、口にくわえている。劍獅、けんしと読みます。安平の魔除けです。
見つけたら、剣の向きを確かめてください。
剣の柄が獅子から見て左にあるもの、右にあるもの、二本を交差させてくわえているもの。地元では、それぞれ意味が違うと言われています。招福、鎮邪、その両方。ただし、どの向きが何を意味するかは、家によっても、語る人によっても違います。文字で決められた規則ではなく、口で伝わってきたものだからです。
起源として語られる話があります。安平にいた兵士が、家に帰ると盾と剣を門にかけた。盾には獅子の顔が描かれていて、その上に剣を斜めに掛ける。それを見た近所の人が、悪いものが寄りつかないと考えて、真似をしはじめた。
本当かどうかは分かりません。ただ、この街には、確かに軍がいました。
魔除けがこれだけ残っているということは、それだけ恐れる理由があった人たちが、ここで暮らしていたということです。海と、疫病と、隣の家と。
次の角を曲がるまでに、いくつ見つかりますか。