この建物は、命令を出すために建てられました。今は、言葉を保管する場所になっています。 正面に回って、少し離れて見てください。中央のドームと、左右に伸びる翼。入口の前だけが弧を描いて前に張り出しています。覚えやすい形です。覚えやすいことが、この建物の仕事でした。…
この建物は、命令を出すために建てられました。今は、言葉を保管する場所になっています。
正面に回って、少し離れて見てください。中央のドームと、左右に伸びる翼。入口の前だけが弧を描いて前に張り出しています。覚えやすい形です。覚えやすいことが、この建物の仕事でした。
一九一六年、台南州の役所として完成しました。設計は森山松之助。彼は台北の総督府をはじめ、この島の主要な官庁の多くを手がけています。
新しい統治者は、まず目に見えるものを建てます。制度よりも、建物のほうが早く伝わるからです。この形の役所が島中に並んだことは、それ自体が一つのメッセージでした。
戦争で中は焼けました。戦後は市役所になり、長く使われ、やがて空きます。修復を経て、二〇〇三年に国立台湾文学館として開きました。
中に入ると、台湾で書かれてきた文学が並んでいます。日本語で書いた作家も、中国語で書いた作家も、台湾語や先住民族の言葉を書き留めようとした人もいます。
何語で書くかを選べなかった人たちの言葉が、その言語を決めた役所の建物の中に、保管されています。