島の頂上は、海面からおよそ六十メートル。辺津宮のあたりから、急な石段が何度も折れ曲がりながら続きます。江戸の参詣者にとって、この石段を上ることは、お参りの一部でした。 一九五九年、この石段の脇に、屋外を上るエスカレーターがつくられました。日本で初めての屋外エスカレーターといわれています。名前はエスカー。三つの区間に分か…
島の頂上は、海面からおよそ六十メートル。辺津宮のあたりから、急な石段が何度も折れ曲がりながら続きます。江戸の参詣者にとって、この石段を上ることは、お参りの一部でした。
一九五九年、この石段の脇に、屋外を上るエスカレーターがつくられました。日本で初めての屋外エスカレーターといわれています。名前はエスカー。三つの区間に分かれ、途中の乗り場で降りれば、それぞれの宮に立ち寄れます。
エスカーには、もう一つ特徴があります。上りしかありません。下りは、昔と同じ石段を歩いて降ります。上りは機械の力を借り、下りは海を眺めながら自分の足で。坂ばかりの島の形に合わせた、よくできた分け方です。
いまのエスカーは、屋根に覆われたトンネルのような中を上っていきます。外の景色は見えません。そのぶん、乗り場を出た瞬間に、光と潮風が一度に戻ってきます。
石段のほうは、何百年ものあいだ、数えきれない草鞋と下駄に踏まれてきました。江戸の参詣者は、この段を一段ずつ上り、息を整えながら社を目指しました。上りを機械に任せるようになったいまも、島を下りる人はみな、同じ石の段を踏んで帰っていきます。
石段は頂上から先も、谷へ下り、また上り、島の奥へと続いています。