中津宮 ― 江戸の芝居町が寄進した社

中津宮 ― 江戸の芝居町が寄進した社

島の中ほど、石段を上りきった高台に、朱塗りの社殿が建っています。中津宮。三姉妹の女神のうち、次女の市寸島比売命(いちきしまひめのみこと)を祀る宮です。美しい女神とされ、芸ごとの守り神、弁財天とも重ね合わされてきました。…

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島の中ほど、石段を上りきった高台に、朱塗りの社殿が建っています。中津宮。三姉妹の女神のうち、次女の市寸島比売命(いちきしまひめのみこと)を祀る宮です。美しい女神とされ、芸ごとの守り神、弁財天とも重ね合わされてきました。 境内に並ぶ石灯籠には、人の名前が刻まれています。その中には、江戸の歌舞伎役者や、長唄・浄瑠璃の師匠たちの名があります。 江戸の芝居町から江の島までは、歩いて何日もかかる道のりでした。舞台に立つ人々が、わざわざ海辺の島まで足を運び、灯籠を寄進したのです。 芸で身を立てる人にとって、弁財天は、腕を上げ、客を呼ぶ神でした。舞台の成功を願って、あるいは成功のお礼として。一門そろって東海道を下り、藤沢から海へ出て、この石段を上った一行もあったことでしょう。名前が売りものの商売だからこそ、名前を残す場所として、この島を選んだのかもしれません。 刻まれた文字の多くは、潮風に削られて、いまでは読みにくくなっています。それでも線の深さには、石工が一文字ずつ力を込めた跡が残っています。 芝居町から来た人々が上った石段は、中津宮を過ぎて、さらに島の頂へと続いています。

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