島の入口に立つ青銅の鳥居は、江戸時代の後期に建てられたものです。柱には、お金を出し合った人々の名前がびっしりと刻まれています。江戸の商人や職人、講と呼ばれる参詣仲間の名です。 鳥居から先は、ゆるやかな上り坂が続きます。両側に宿や茶屋、土産物の店が並ぶ、門前町の坂です。…
島の入口に立つ青銅の鳥居は、江戸時代の後期に建てられたものです。柱には、お金を出し合った人々の名前がびっしりと刻まれています。江戸の商人や職人、講と呼ばれる参詣仲間の名です。
鳥居から先は、ゆるやかな上り坂が続きます。両側に宿や茶屋、土産物の店が並ぶ、門前町の坂です。
この坂を上った人々が頼ったのは、弁財天でした。もとはインドの川の女神で、水の神です。それが日本では、音楽や芸ごと、そして財をもたらす神として信じられるようになりました。商いの繁盛を願う商人、芸の上達を願う芸人。願いを抱えた人々が、江戸から何日も歩いて、この坂にたどり着きました。
帰りの荷物に加えられたのが、土産です。貝殻を細工した貝細工は、軽くて壊れにくく、海の島らしい品でした。二つを一対にした小さな饅頭、女夫饅頭(めおとまんじゅう)も、長く続く名物です。
坂の途中では、鉄板でタコを丸ごと押しつぶす音が響きます。薄く焼き上がったたこせんべいは、上りの途中で軽くつまむのにちょうどいい一枚です。サザエを甘辛く煮て卵でとじた江の島丼は、島を下りてきてから、腰を落ち着けて味わう人が多い一品です。
坂の上には、朱塗りの門が待っています。二百年前の参詣者も、宿の暖簾のあいだを抜けて、この坂の続きを上っていきました。