島の西の高まりの、いちばん奥に建つ社が、奥津宮です。三姉妹の女神のうち、長女の多紀理比売命(たぎりひめのみこと)を祀っています。 江戸時代には、ここより先の岩屋に弁財天が祀られていました。けれど岩屋は、潮が満ちたり波が高かったりする季節には近づけません。そのあいだ弁財天をお移ししておく場所として、この奥の宮が使われてい…
島の西の高まりの、いちばん奥に建つ社が、奥津宮です。三姉妹の女神のうち、長女の多紀理比売命(たぎりひめのみこと)を祀っています。
江戸時代には、ここより先の岩屋に弁財天が祀られていました。けれど岩屋は、潮が満ちたり波が高かったりする季節には近づけません。そのあいだ弁財天をお移ししておく場所として、この奥の宮が使われていたといわれます。岩屋を目指した参詣者も、波の荒い季節には、ここで祈って引き返しました。
拝殿の天井には、一匹の大きな亀が描かれています。どの位置から眺めても、亀が見る人をにらみ返しているように見えることから、八方睨みの亀と呼ばれています。
もとの絵は、江戸時代の絵師、酒井抱一(さかい ほういつ)が描いたものです。長い年月で傷んだため、いま天井にあるのは、それを写して描き直したものです。
亀は、長寿のしるしであり、海の神の使いともされる生きものです。海に浮かぶ島のいちばん奥の天井に、海の生きものが守り神として描かれているのです。
二百年前の絵師が仕掛けた目の工夫が、いまも訪れる人の上から、この社を見守っています。
社の先では、道が崖へ向かって下り、海の洞窟、岩屋へ続いています。