島の頂上近く、サムエル・コッキング苑の手前に、新しい寺があります。江ノ島大師。平成に入ってから開かれた寺です。本堂の奥には、全身が真っ赤な大きな不動明王の像が座っています。怒りの表情で、人々の迷いを断ち切る仏です。…
島の頂上近く、サムエル・コッキング苑の手前に、新しい寺があります。江ノ島大師。平成に入ってから開かれた寺です。本堂の奥には、全身が真っ赤な大きな不動明王の像が座っています。怒りの表情で、人々の迷いを断ち切る仏です。
寺の名の「大師」とは、弘法大師、空海のことです。平安時代のはじめに唐で密教を学び、日本へ持ち帰った僧です。空海は日本じゅうを歩いたと伝えられ、この島の南の崖の下にある岩屋でも修行したという言い伝えがあります。
江戸時代まで、この島には弁財天を祀る寺がいくつもありました。参詣者を迎え、宿を世話し、縁起を語ったのも、それらの寺の僧たちでした。
明治のはじめ、神と仏を分けるよう定められたとき、それらの寺は神社に改められ、島の仏教の色は大きく薄れました。この寺は、その島に、あらためて仏の場所を開いたものといえます。
本堂の中は、護摩をたく煙で、柱や壁が黒くいぶされています。お香の匂いが、木にしみついています。
千年以上前に岩屋へ向かったという僧の道と、いまこの寺を訪れる人の道。島の古い信仰の上に新しい寺が建ち、祈りの道は、島の奥へと続いています。