伊豆大島 ― 見える日と、見えない日

伊豆大島 ― 見える日と、見えない日

南南西の海、空気の澄んだ日には、水平線の上に大きな島の影が浮かびます。伊豆大島です。ここから六十キロほど。相模湾の外に浮かぶ、伊豆諸島でいちばん大きな島です。 島の中央には、三原山という火山があります。島の影は、尖った山ではなく、なだらかに裾を引いた形をしています。噴火で流れ出した溶岩や灰が、裾野を広げながら積み重なっ…

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南南西の海、空気の澄んだ日には、水平線の上に大きな島の影が浮かびます。伊豆大島です。ここから六十キロほど。相模湾の外に浮かぶ、伊豆諸島でいちばん大きな島です。 島の中央には、三原山という火山があります。島の影は、尖った山ではなく、なだらかに裾を引いた形をしています。噴火で流れ出した溶岩や灰が、裾野を広げながら積み重なってできた形です。 江戸時代、この島からは、薪や炭、椿油を積んだ船が江戸へ向かいました。相模湾を出入りする船乗りにとって、大島の影は、外の海と湾の境を知らせる目印でした。 三原山は、いまも活動を続ける火山です。一九八六年の噴火では溶岩が流れ出し、島の人々一万人あまりが、全員島の外へ避難しました。人々が島へ戻れたのは、一か月ほどあとのことです。 江の島から、大島がいつも見えるわけではありません。見えるのは、冬の晴れた日や、雨が上がって空気が洗われた日です。 見えた日は、海の向こうにもう一つ、人が暮らし、船が行き来する島があることを、あの影が教えてくれます。海の道は、あの島からさらに南の、伊豆の島々へ続いています。

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