西南西の方角、相模湾の奥に、ゆるやかに盛り上がる山並みがあります。箱根の山々です。そこから南へ、伊豆半島が海に向かって長く延びています。 箱根は、火山がつくった土地です。何度も噴火をくり返し、いまの山と湖の形ができました。いまも温泉が湧き、山の一部では噴気が上がっています。…
西南西の方角、相模湾の奥に、ゆるやかに盛り上がる山並みがあります。箱根の山々です。そこから南へ、伊豆半島が海に向かって長く延びています。
箱根は、火山がつくった土地です。何度も噴火をくり返し、いまの山と湖の形ができました。いまも温泉が湧き、山の一部では噴気が上がっています。
その火山の山を越えていくのが、東海道です。江戸と京都を結ぶ道で、箱根の峠はいちばんの難所でした。江戸へ向かう旅人は、峠を下りきって相模湾を目にし、海の向こうに浮かぶ小さな島を、江戸が近づいた印として眺めたことでしょう。
伊豆半島には、もっと長い旅の来歴があります。伊豆は、もとは南の海にあった火山の島々でした。それが、地球の表面をおおう岩の板、プレートの動きに乗って北へ運ばれ、本州にぶつかって半島になったと考えられています。
その動きの跡が、相模湾の深さです。海の底ではプレートが陸の下へ沈み込み、湾は深く落ち込んでいます。一九二三年の関東大震災を起こしたのも、この場所の動きでした。
箱根や伊豆の稜線がくっきり浮かぶのは、空気の澄んだ日だけです。夕方、太陽はこの山並みの方へ沈んでいきます。
峠を越えた旅人の道も、南から来た島々の道も、あの山並みの向こうから、この湾へと続いています。