この小網代の森が今のように守られるまでには、長い、長い時間がかかりました。 話は数十年前にさかのぼります。高度経済成長を経て、海辺のこの土地にも、大きな開発の計画が持ち上がりました。ゴルフ場やリゾート施設をつくる構想です。源流から干潟まで、ひと続きにつながった生態系は、もし計画が進めば、いくつにも分断されてしまうはずで…
この
小網代の森が今のように守られるまでには、長い、長い時間がかかりました。
話は数十年前にさかのぼります。高度経済成長を経て、海辺のこの土地にも、大きな開発の計画が持ち上がりました。ゴルフ場やリゾート施設をつくる構想です。源流から干潟まで、ひと続きにつながった生態系は、もし計画が進めば、いくつにも分断されてしまうはずでした。
そのとき、声をあげた人たちがいました。慶應義塾大学の岸由二教授らを中心として、生物学者やボランティアが集い、保全と開発が両立できる新たなプランを提示したのでした。
彼らが繰り返し伝えたのは、「
流域」というひとつの考え方でした。一滴の水が源流に生まれ、湿地をうるおし、干潟にそそぎ、海へと帰っていく。その一連の流れこそが、約2,000種を超える生きものたちを支えている、と。いま、小網代の森と呼ばれている、浦の川の流域生態系は、源流から湿原、干潟、海にいたるまで、流域の地形が残されている奇跡の自然。この流域生態系を、まるごと保全して、生きものたちが賑やかに集い暮らす生態系を創出すれば、それはかならずや首都圏の奇跡の自然、宝ものになり、三浦の未来をささえてゆくと彼らは信じていたのです。
保全を求める運動は、少しずつ人々の心を動かしていきました。そしてついに森はゴルフ場開発を逃れ、流域地形まるごとそのままの姿で、次の世代へと引き継がれることになりました。2011年、浦の川の流域生態系は、「小網代の森」という名称で、国土交通省の近郊緑地保全区域・特別保全地区として、神奈川県・三浦市・かながわトラストみどり財団・そして市民活動の母体であるNPO小網代野外活動調整会議が共同管理し、未来にそのバトンをつなぐことになりました。小網代の森が一般市民に開放されるのは、湿原や散策路の整備がひとまず完了した、2014年7月のことです。
あなたが今、心の中に思い描いているこの森の、自然の賑わいは、その賑わいを守ろうと決めた、たくさんの市民、行政、企業の共同が守ってきた、三浦の宝物なのです。
テーマ: ゴルフ場・リゾート開発計画と、それを越えた保全運動
中心人物: 慶應義塾大学・岸由二教授らを中心とする生物学者と市民
キーワード: 「
流域」という考え方/約2,000種を支える生態系
経緯: 2011年に近郊緑地保全区域・特別保全地区へ、2014年7月に一般開放
管理: 神奈川県・三浦市・かながわトラストみどり財団・NPO小網代野外活動調整会議
所在地: 神奈川県三浦市三崎町小網代
地図:
小網代の森マップ
公式サイト/Official Site:
小網代の森(神奈川県)
原稿監修 : 岸由二 (慶應義塾大学 名誉教授)
写真 : 柳瀬博一 (東京科学大学 教授)
プロデューサー :
太刀川英輔 (
NOSIGNER代表・慶應義塾大学特任教授)
発行 :
NOSIGNER・NPO法人 小網代野外活動調整会議
Venue-official content of 小網代の森. Supervised by: 小網代の森.