目を閉じて、想像してみてください。木々のあいだから、かすかに聞こえてくる、ちいさな水の音を。ここは、小網代の森の物語が始まる場所、浦の川の源流エリアです。70ヘクタールにおよぶこの森のなかで、すべての水は、まずこのしずかな谷から、ひと粒ずつ生まれていきます。…
目を閉じて、想像してみてください。木々のあいだから、かすかに聞こえてくる、ちいさな水の音を。ここは、
小網代の森の物語が始まる場所、
浦の川の源流エリアです。70ヘクタールにおよぶこの森のなかで、すべての水は、まずこのしずかな谷から、ひと粒ずつ生まれていきます。
源流の水は、雨が森に降り、土と落ち葉のあいだをゆっくりとくぐり抜けて、何日も、ときには何ヶ月もかけて、ようやく地表へとにじみ出てきます。だからこの水は、いつも澄んでいて、ひんやりと冷たい。湧き出したばかりの水は、まだ自分が川になることも、やがて海へたどり着くことも知らないかのように、ただ静かに集まっていきます。
耳をすませてみてください。源流の音は、滝のような大きな響きではありません。指先でそっと触れた糸が震えるような、細く、たよりない音です。けれど、この小さな一滴が、湿地をうるおし、たくさんの生きものを養い、最後には干潟でカニたちの暮らしを支えていく。すべての命のはじまりが、この静けさのなかにあります。
この源流のまわりには、湿り気を好む植物たちがそっと身を寄せ合っています。光があまり届かない谷の底で、彼らは何百年ものあいだ、この水とともに静かに生きてきました。人の手が入らず、源流から海までがひとつながりのまま残された森は、関東の近くではほとんど見られません。だからこそ、ここは
「奇跡の森」と呼ばれています。
想像してみてください。今この瞬間も、誰も見ていない谷の奥で、新しい水がひと粒、生まれ落ちていることを。あなたが呼吸をしているこの一瞬にも、この森のどこかで、水はやさしく流れ続けています。
エリア名: 源流エリア(浦の川の源流)
所在地: 神奈川県三浦市 小網代の森
地図
森の規模: 約70ヘクタール
特徴: 源流から湿地・干潟・海へと続く流域がそのまま残る稀少な緑地
水質: 地中をゆっくり通り湧き出すため澄んで冷たい
記録された生物: 約2,000種以上
散策: 標高差を活かした整備済みの木道
公式サイト/Official Site:
小網代の森(神奈川県)