この小網代の森が今のように守られるまでには、長い、長い時間がかかりました。 話は数十年前にさかのぼります。高度経済成長を経て、海辺のこの土地にも、大きな開発の計画が持ち上がりました。ゴルフ場やリゾート施設をつくる構想です。源流から干潟まで、ひと続きにつながった生態系は、もし計画が進めば、いくつにも分断されてしまうはずで…
この
小網代の森が今のように守られるまでには、長い、長い時間がかかりました。
話は数十年前にさかのぼります。高度経済成長を経て、海辺のこの土地にも、大きな開発の計画が持ち上がりました。ゴルフ場やリゾート施設をつくる構想です。源流から干潟まで、ひと続きにつながった生態系は、もし計画が進めば、いくつにも分断されてしまうはずでした。
そのとき、声をあげた人たちがいました。慶應義塾大学の岸由二教授らを中心として、生物学者や地元のボランティアの人々が集い、保全と開発が両立できる新たなプランを提示したのでした。彼らが繰り返し伝えたのは、「
流域」というひとつの考え方でした。一滴の水が源流に生まれ、湿地をうるおし、干潟にそそぎ、海へと帰っていく。その一連の流れこそが、約
2,000種を超える生きものたちを支えている、と。どこか一か所を切り取れば、すべてがほどけてしまう——彼らはそう信じていたのです。
保全を求める運動は、少しずつ人々の心を動かしていきました。そしてついに、小網代の森はゴルフ場開発を流れ、自然のままの姿で次の世代へと引き継がれることになります。やがて
神奈川県が管理し、人々がそっと歩けるよう木道が整えられ、二〇一〇年代に一般へと開かれました。
あなたが今、心の中に思い描いているこの森の静けさは、誰かが守ろうと決めなければ、消えていたかもしれない景色です。今この瞬間も、源流の水はゆっくりと流れ、カニたちは干潟で息づいています。あなたが呼吸しているあいだ、この森もまた、変わらぬ速さで、息をし続けています。
名称: 小網代の森(リーフフォレスト/流域思考の保全地)
所在地: 神奈川県三浦市
面積: 約70ヘクタール
地形の特徴: 源流から湿地・干潟・海へと続く一連の流域がそのまま保全
葉のかたち: 浦の川を主脈とし、小さな谷が支脈のように流れ込む形状
記録された生物種: 約2,000種以上
象徴的な生きもの: アカテガニ(森と海を行き来して産卵)
アクセス:
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公式サイト/Official Site:
小網代の森(神奈川県)