ハンノキやジャヤナギを支えている広い谷底は、一面、緑におおわれています。そのみどりは、おそらく数百種の、樹木ではない植物で構成されているのですが、景色の大半を形成する植物は、数種類。アシ、オギ、クサヨシ、ガマ、フキ、ハンゲショウ。中でも圧倒的な面積を占有するのは、オギとアシの二種類です。…
ハンノキや
ジャヤナギを支えている広い谷底は、一面、緑におおわれています。そのみどりは、おそらく数百種の、樹木ではない植物で構成されているのですが、景色の大半を形成する植物は、数種類。アシ、オギ、クサヨシ、ガマ、フキ、ハンゲショウ。中でも圧倒的な面積を占有するのは、オギとアシの二種類です。
オギは、やや乾燥気味の湿原を占有します。ススキに似ていますが、穂の姿、根元の姿がススキとは全く異なる、別種です。秋の湿原を飾るオギの穂は、みごとな銀色。金色に近いススキとはまるで違う景色をつくりあげます。根元は、一本ごとの茎が直立するので、これも、株立ちするススキとは景色がまるでちがうのです。
地下水位が高く、浸水する可能性も高い湿地を占有するのは、アシという植物です。ヨシとよばれることもありますが、全く同じ植物の別名です。穂はオギに比べてはるかに大きく四方に広がることがあります。小網代の谷底では、ハンノキ林をぬけたあたりから、散策路の周囲は、広がりの大半が、海辺まで、オギとアシの群落になります。オギ、アシの分布は地下水位で決まっています。
オギとアシの湿原に混ざって、各所で固有の面積を占有する湿原植物たちがあります。ハンノキの森の森床には、フキの大群落がひろがります。ジャヤナギの群落の周囲にはクサヨシ、日当たりの良い沼地には、ガマや、ハンゲショウの群落が形成されます。
そんな湿原の景色が、ここ10年ほど、激変しはじめています。2011年3月11日の東日本大震災時、相模湾の湾岸を襲った高潮が、小網代の湿原奥まで侵入し、大量の外来植物を運び込んでしまいました。いま、小網代の湿原は、津波の影響で湿原に広がってしまったセイタカアワダチソウ、オオブタクサ、ネズミホソムギなどの攪乱性の外来植物から、いかにして在来の湿原植物を守ってゆくか、大きな課題に直面しています。
小網代の谷底の湿原は、
干潟の直前で、アイアシと呼ばれる稀少な湿原植物の大群落に移行してゆきます。オギとも、アシとも、全く異なる塩水性の希少種であるアイアシの湿原をどのようにして保全してゆくか、これも、これからの大きな課題の一つです。
主な湿原植物: オギ、アシ(ヨシ)、クサヨシ、ガマ、フキ、ハンゲショウ
分布の決まり: 地下水位で決まる(オギ=やや乾燥/アシ=浸水しやすい湿地)
希少種:
干潟の手前に移行する塩水性のアイアシ群落
課題: 2011年の津波で侵入した外来植物(セイタカアワダチソウ等)からの保全
関連:
ハンノキ・
ジャヤナギを支える谷底
所在地: 神奈川県三浦市三崎町小網代
地図:
小網代の森マップ
公式サイト/Official Site:
小網代の森(神奈川県)
原稿監修 : 岸由二 (慶應義塾大学 名誉教授)
写真 : 柳瀬博一 (東京科学大学 教授)
プロデューサー :
太刀川英輔 (
NOSIGNER代表・慶應義塾大学特任教授)
発行 :
NOSIGNER・NPO法人 小網代野外活動調整会議