北鎌倉の谷戸の奥、苔むした石段の先に、浄智寺があります。鎌倉五山の第四位に数えられた禅寺です。鎌倉時代の後半、北条氏の一族によって開かれました。 参道の入口には、湧き水をたたえた小さな井戸があります。甘露の井(かんろのい)。鎌倉十井のひとつです。平地の狭い鎌倉では、良い水は貴重でした。谷戸の奥に寺が建てられたのには、山…
北鎌倉の谷戸の奥、苔むした石段の先に、浄智寺があります。鎌倉五山の第四位に数えられた禅寺です。鎌倉時代の後半、北条氏の一族によって開かれました。
参道の入口には、湧き水をたたえた小さな井戸があります。甘露の井(かんろのい)。鎌倉十井のひとつです。平地の狭い鎌倉では、良い水は貴重でした。谷戸の奥に寺が建てられたのには、山から湧き出す水があったからでもあります。
石段を上った先の門は、上に鐘を吊るした鐘楼門です。中国の宋の建築にならった形で、鐘の重さを門そのものが支え、人はその鐘の下をくぐって境内へ入っていきます。
この寺では、庭と建物と山が、境もなくつながっています。整えすぎない木々、苔と落ち葉、山の崖に掘られたやぐら。禅の庭は、何かを加えるよりも、削り落とすことでつくられてきました。谷戸の形そのものを、庭として残したのです。
境内の奥の崖には、布袋の石像が座っています。多くの参拝者に撫でられてきたお腹は、つややかに光っています。
風が杉のこずえを渡っていく音のほかに、谷戸にはほとんど音がありません。
境内の裏山からは、尾根伝いに上るハイキングコースが始まります。道は山を越えて、源氏山、そして大仏のある長谷の谷へと続いています。