湿った熱気が、巨木の葉のあいだに淀んでいました。1814年、ジャワ島の中部。地元の村人がひとりのヨーロッパ人にそっと耳打ちします——森の奥に、土と灰に埋もれた「丘」がある、と。 その人物の名は、トマス・スタンフォード・ラッフルズ。当時のジャワ副総督であり、この島に眠る古い物語に深く魅せられていた人物です。報せを受けた彼…
湿った熱気が、巨木の葉のあいだに淀んでいました。
1814年、ジャワ島の中部。地元の村人がひとりのヨーロッパ人にそっと耳打ちします——森の奥に、土と灰に埋もれた「丘」がある、と。
その人物の名は、トマス・スタンフォード・ラッフルズ。当時のジャワ副総督であり、この島に眠る古い物語に深く魅せられていた人物です。報せを受けた彼は、技師のコルネリウスを密林の奥へと送り出します。
一団が踏み入った先にあったのは、ただの丘ではありませんでした。蔓草と苔に覆われた斜面の下から、規則正しく積まれた石の輪郭が透けて見えたのです。鉈が振るわれ、絡みつく根が次々と切り払われていく。土を払うたびに、灰色の安山岩が静かに顔を出します。その石は、千年ものあいだ、誰の目にも触れることなく眠り続けていたのです。
やがて、人の手で組まれた段が現れました。一段、また一段。土に呑み込まれていた石段が、上へ、上へと続いていきます。その先には、彫り込まれた仏たちの姿。蔓のあいだからゆっくりと、静かな微笑みが顔をのぞかせました。
ボロブドゥール——その名が再び世界の歴史に刻まれた瞬間でした。森を押しのけてそびえ立ったのは、石でできたひとつの宇宙。千年の沈黙が、終わったのです。
場所: ボロブドゥール寺院(中部ジャワ州マゲラン)
再発見: 1814年、トマス・スタンフォード・ラッフルズの指示による
調査担当: H.C. コルネリウス(技師・約200名を動員)
素材: 安山岩(火山岩)の切石
埋没要因: 火山灰の堆積と熱帯密林の繁茂
地図:
ボロブドゥール周辺地図
公式サイト/Official Site:
Borobudur Park
Photo: KITLV (Leiden University Libraries) /
Wikimedia Commons (CC-BY-4.0)