横浜山手に点在する西洋館の中でも、ひときわ異彩を放つ存在――それがベーリック・ホールです。1930年、イギリス人貿易商B.R.ベリック氏のために、建築家J.H.モーガンが情熱を注いで設計したこの邸宅は、スパニッシュ様式の真髄を体現しています。白い漆喰の壁に赤い瓦屋根、そして幾何学的な装飾が織りなす外観は、地中海の風を横…
横浜山手に点在する西洋館の中でも、ひときわ異彩を放つ存在――それがベーリック・ホールです。1930年、イギリス人貿易商B.R.ベリック氏のために、建築家J.H.モーガンが情熱を注いで設計したこの邸宅は、スパニッシュ様式の真髄を体現しています。白い漆喰の壁に赤い瓦屋根、そして幾何学的な装飾が織りなす外観は、地中海の風を横浜に運んできたかのよう。一歩中に入れば、そこには驚くほど広々とした空間が広がります。吹き抜けのエントランスホール、優雅な曲線を描く階段、そして暖炉を中心に配された居間――すべてが、かつてこの館で繰り広げられた華やかな社交の日々を想起させます。モーガンは、この建物に単なる住宅以上の意味を込めました。それは、異国の地で暮らす外国人たちにとっての心の拠り所であり、また日本の近代化を象徴する文化の架け橋でもあったのです。戦火の時代を奇跡的に生き延びたこの館は、今も訪れる人々に、国境を越えた美の普遍性を静かに語りかけています。光と影が織りなす空間の中で、時代を超えた建築家の夢に触れてみてください。
J.H.モーガン(1877-1937)はアメリカ出身の建築家で、横浜を中心に数多くの西洋建築を手がけました。ベーリック・ホールは彼の代表作の一つで、スパニッシュ・コロニアル・リバイバル様式を採用しています。この様式は1920-30年代にアメリカ西海岸で流行し、スペイン植民地時代の建築を現代的に解釈したものです。ベーリック・ホールは山手の西洋館の中で最大規模を誇り、延床面積は約600平方メートル。「幻の西洋館」と呼ばれるのは、戦後一時期公開されず、その存在が忘れられかけていた時期があったためです。現在は横浜市が管理し、一般公開されています。